コリン・ファースは若い頃、大きな挫折を味わっています。
高慢と偏見のダーシー役で大成功する前、ほとんど知られていない「消えた5年間」があるのです。
主演映画が大コケし、格上の女優であるパートナーの子供たちのために、カナダの森へ消え、大工仕事でアルバイトをしていた時代です。
そこから帰国したわずか1年後、BBCドラマ『高慢と偏見』のダーシー役でイギリス中を熱狂させ、最終的にはアカデミー賞俳優へ。
このドラマチックな逆転劇と、現在の不動の地位。その原点には「カナダでの失意の時代」があります。
本記事では、ほとんど語られてこなかった、コリン・ファースの若き日の実像に迫ります。
コリン・ファースの若い頃の挫折!映画『ヴァルモン』の大コケ!そしてカナダへ移住
不運!タイミングの悪さで、主演映画が大コケ!
1989年、コリン・ファースは映画『ヴァルモン』の主役に抜擢されます。
初めての主演映画です。コリンも、十分な準備をして、臨んだことでしょう。
しかし、『ヴァルモン』は全く話題にならず、北米での収入はわずか約100万ドル。製作費の3%にも届かない大赤字で終わりました。
理由は、一年前にアメリカで、同じテーマの映画が公開され、大ヒットしていたからです。
筆者注)映画「危険な関係」、1988年アメリカ映画。主演は、グレン・クローズ、ジョン・マルコヴィッチ。原作はラクロの同名小説。
「ヴァルモン」は、全く話題になりませんでした。
あまりにも、タイミングが悪すぎたのです。
その結果、あるレビュアーはこう書いています。
「かわいそうなコリン・ファース。当時はまだ若くてキャリアも浅かった。きっと『アマデウスの監督だ!この映画は絶対に当たる!』と思っていたに違いない。まさかあんなことになるとは…」( Frock Flicks)
若手でこれから!というときに、初主演映画が大失敗。どれだけショックだったか、計り知れません。
私の想像ですが、「もう俳優としてのキャリアは終わった」と考えても不思議はないくらいの出来事です。
かなりの挫折感を味わったことは、間違いありません。
また、映画の失敗について、あちこちでマスコミに追いかけ回されたこともあったのではないでしょうか。
この『ヴァルモン』の撮影中に出会ったのが、共演者のメグ・ティリーです。彼女は『アニエスの祝祭』(1985年)でゴールデングローブ賞を受賞し、アカデミー賞にもノミネートされた実力派女優。
メグ・ティリー自身が後に語っています。
「私たちが出会ったとき、私はかなりの大スターでしたが、彼はまだ売り出し中でした」(People誌)。
メグは、前のパートナーとの間に二人の子供がいました。
交際を始めてから、メグが、カナダの森に東京ドーム4個分(!)の広さの土地を買い、子育てのために移住します。
パートナーとともに、カナダの森へ
コリン・ファースも、メグや子供たちと一緒に、カナダの森について行きました。
テレビもない、森の奥深くの暮らしです(Meg Tilly Wikipedia英語版)。
もう英国にいたくなかったのかな、、、そんな悲しい想像をしてしまいます。
翌1990年には息子ウィルが生まれました。
コリン・ファースは俳優の仕事をほぼ休止し、大工仕事などのアルバイトをしていたことが伝えられています(Daily Mail)。
初の主演映画の大失敗。
大きな挫折。
人里離れたカナダの森で、きっと、失意のどん底だったはずです。
「俺、終わったな」と思いながら、それでも諦めきれなかったのだろう、と私は想像しています。
コリン・ファースはここで、5年間暮らしました。その間、ずっと自分と向き合っていたのでしょうか。
「自分は、これからも、俳優としてやっていきたいのかどうか?」と。
だとしたら、この5年間があったからこそ、帰国後の大ブレイクが生まれたことになります。
そう思うと、人生とは不思議なものですね。
コリン・ファースの若い頃 挫折から奇跡の逆転劇!高慢と偏見のダーシー役に!
カナダでの別れ、ダーシー役との出会い
しかし1994年、コリンとメグは別れ、コリンは英国に戻ります。
妹のケイト・ファースはこう振り返っています。
「弟はウィルをとても大切にしていた。でも、森の中の孤立した生活と、仕事との間で選択を迫られたのです。」(Daily Mail)。
やはり、俳優として、もう一度演じたい!という気持ちが勝ったのでしょう。
イギリスに戻った翌年、1995年に転機が訪れます。BBCドラマ『高慢と偏見』のフィッツウィリアム・ダーシー役です。
プロデューサーのスー・バートウィッスルは最初からコリン・ファースを第一候補として推していましたが、コリンは、「作者の女性目線で描かれた恋愛」に共感できなかったようです。
「自分はこの役に向いていない」
として、何週間にもわたってオファーを断り続けました(Wikipedia英語版)。
5年ぶりの英国で、俳優の仕事。しかも、名指しでのビッグオファーです。しかし、彼はそれを断るのです。
これが、コリン・ファースの俳優としての姿勢を表していますよね。演技派・真の俳優だという、プライドを感じます。
ファンとしては、こんなところもたまらない魅力ですね。
バートウィッスルの粘り強い説得と、ダーシーという人物を深く読み込んだことで、ようやくコリン・ファースは、役を受けます。
ダーシーは、社会的な立場の高さゆえに感情を表に出せず、内面に激しい葛藤を抱えた人物です。
コリン・ファース自身、後にこう語っています。「抑えられたもの、隠されたもの、言葉にされないものの中に、計り知れないドラマがある」(TIME誌)。
かつての主演映画の大失敗は、彼のトラウマになっていたはずです。
私は、かなり慎重に役選びをしただろうと思いました。それもあって、「合わない役は断ろう」と考えたのかもしれません。
そして、ドラマは大ヒット。放送後の反響は大きく、各回の平均視聴者数は1,000万人以上。
最終回はイギリス全体の約40%が視聴したといわれています(Wikipedia英語版)。
コリン・ファースはイギリス中の注目を集めました。
大コケした映画の主役から、カナダでの失意の5年間を経て、一気にイギリスを代表する俳優へ。
まさに、「奇跡の逆転劇!」と言えるでしょう。
アイドルではなく、演技力で評価された俳優として
ダーシー役でのブレイクは「見た目のアイドル人気」ではなく、「内面を表現する演技力」への評価でした。
ブリタニカ百科事典でも、コリン・ファースの演じる人物像は「抑制された感情表現」「内面に葛藤を抱える知的な男性像」が特徴として挙げられています。
これで、「自分は俳優としてやっていける」と、自信を深めたことでしょう。
1980年代に「ブリット・パック」のアイドル扱いから距離を置き、職人として積み重ねてきた演技の方向性が、ここで一つの形になったのだと、私は思います。
父親として、別れた後も誠実
コリンはメグと別れ、帰国しました。
ファース自身、ウィルと離れることを「人生で一番つらい瞬間だった」と語っています。
それでも毎晩カナダに電話をかけ、ウィルたちに本の読み聞かせをしていたといいます(Daily Mail)。
その後も、子供たちの卒業式や、孫の誕生に駆けつけ続けていたようです。
多忙な中、子供達のために、できるだけ一緒に過ごそうとしていますね。良いお父さんです。
お父さんとしての責任を果たすのは当然だから、忙しくても行く。
そんな誠実なところが垣間見えて、素敵だなと思いました。
そして、メグ・ティリー自身が「彼はウィルにとって素晴らしい父親です」と語っています(People誌)。
私は、「円満離婚」というものを信じていなかったのですが、別れたパートナーが良いコメントをしている、ということは、コリン・ファースとの関係が、今も良好だということですね。
「円満離婚」もあるのだな、と、少し認識が変わりました。(正確には、メグとは結婚していません、パートナーです)
そして、別れた後も、家族のために時間を割いているということが、元パートナーとの良い関係を続けられる、秘訣なのかもしれません。
役柄から見える、「誠実さ」は、演技でなく、コリン・ファースの人柄そのものなのですね。
コリン・ファースの若い頃『英国王のスピーチ』で、英国紳士イメージの確立
アカデミー賞受賞
2010年公開の『英国王のスピーチ』で、コリン・ファースは吃音に苦しむジョージ6世を演じ、アカデミー賞主演男優賞を受賞します。
映画を見ていて、
「ジョージ6世は、コリンと同じで、苦労人だなあ」
と思ったものです。
奔放な兄が、離婚歴のある女性と駆け落ちしてしまって、退位。
ある日突然、自分が国王になってしまった。
(なぜ英国の王族は、、、いや、やめておきましょう(笑))
国王になったら、当然スピーチの機会は増える。吃音があるのに。
もうどうしたらいいんだ!と、吃音や自分のプライドと戦う、人間としての国王の姿は、挫折を経験した、コリン・ファースの姿と重なります。
ジョージ6世は、戦争が始まる時、言語療法士のローグに付き添ってもらいながら、国民のために、9分半のラジオ生放送でのスピーチをやり遂げます。
国王は、長いスピーチという試練を乗り越えました。
感情を抑え、静かに、しかし誠実に責任を果たす。
これこそが、私たちが「英国紳士」という言葉に感じるイメージそのものではないでしょうか。
コリン・ファースはこの役で、そのイメージを完全に自分のものにしたのです。
監督による「ファンへのウィンク」
私は、この映画のエンドクレジットを見ていて、おや?と思い、映画を巻き戻して、ある俳優を二度見しました。
最初は気づかなかったのですが、
言語療法士ライオネル・ローグの妻「マートル・ローグ」役を演じたのが、なんとジェニファー・イーリー。
『高慢と偏見』でエリザベス・ベネットを演じた相手役その人です。
これは偶然ではありませんでした。
監督のトム・フーパー自身が「ジェニファー・イーリーのキャスティングは、『高慢と偏見』ファンへのウィンクだった」と明言しています(UPI、2011年)。
ダーシーとエリザベスが、15年の時を経て再会、共演する。
ファンにはたまらない仕掛けですね。監督、最高です!
また、コリン・ファースとジェニファー・イーリーは、『高慢と偏見』の撮影中に交際していたことも知られています。
私の想像ですが、二人の間には、言葉を超えた「静かな信頼感」があるように思います。
それもまた、素敵な関係ですね。
コリン・ファースの若い頃はイケメン、現在はイケオジ
コリン・ファースの現在は、「イケオジ」
現在、コリン・ファースは、ロンドンを拠点に、俳優・プロデューサーとして活動しています。
コリンは、昔から美形、イケメンでしたが、今ではそこに、年齢なりの落ち着きや、包容力が感じられるようになり、さらに魅力が増しています。
ヒュー・グラントとともに、「イケオジ」と呼ばれて、
日本で人気なのも納得ですね。
なお、「ブリット・パック」と呼ばれ、アイドル扱いされるのを嫌がったコリンが、「イケオジ」と呼ばれているのを知ったら、どう思うでしょうか。
ぜひ、聞いてみたいものです(笑)
「英国王のスピーチ」以外の作品
『英国王のスピーチ』以降も、コリン・ファースは精力的に活動を続けています。
『ブリジット・ジョーンズの日記』シリーズ(2001年〜2025年)では、ヒュー・グラントと共演。
2016年の第3作では、カナダで育った長男ウィルと、親子共演も果たしました。
息子さんはチョイ役だったようですが、成長した息子と一緒に仕事ができて、きっと嬉しかったでしょうね。
ニコニコして見守る、コリン・ファースが見えるようです。
また、「英国王〜」以前にも、重要な作品があります。
2003年公開の『真珠の耳飾りの少女』では、17世紀オランダの画家フェルメール役を演じ、若きスカーレット・ヨハンソンと共演。
貴族やエリートの役が多い中、ミステリアスな画家という異色の役どころで、40代とは思えない長髪姿の色気が話題になりました。
コリン・ファースの若い頃の映画デビュー作『アナザー・カントリー』(1984年)
演劇学校を卒業したコリン・ファースのデビュー作となったのが、映画『アナザー・カントリー』(1984年)です。
1930年代の英国名門校を舞台に、理想と現実の間で揺れる青年たちの葛藤を描いた青春映画で、英語版Wikipediaによればイートン校がモデルとされています。
コリンは、密かにレーニンを崇拝する学生役。
この時代、共産主義に傾倒している高校生とは、なかなかです。思想的に流行っていたのでしょうか。
この時期の同世代の若手イギリス人俳優たちは「ブリット・パック」と呼ばれることもありました(Wikipedia英語版)。
コリン・ファース自身は、この呼び名を嫌っていたようです。
容姿が端正なコリン・ファースは、アイドル扱いされてしまい、それが嫌だったようですね。
私も、演技派のコリンには「アイドル扱い」は馴染まないと思っています。
コリン・ファースの若い頃、生い立ちと演劇学校
生まれと育ち
コリン·アンドリュー·ファースは1960年9月10日、イングランド南部ハンプシャー州グレイショットで生まれました(Wikipedia英語版)。
父は歴史学の大学講師で、ナイジェリア政府の教育関連の仕事にも携わっており、母は比較宗教学の講師という、知的な家庭です。
弟と妹がいる3人兄弟ですが、3人とも俳優をしています。
コリンは、学校の勉強にはほとんど興味を持てない子供でした。
しかし10歳から演劇ワークショップに通い始め、14歳までにはプロの俳優になると決めていたといいます。(wikipedia)
14歳といえば、中学生くらい。そこで、もう、将来の仕事を決めていたとは驚きました。そして、それを叶えてしまった、本人の努力が素晴らしいですね。
本人は後にこう語っています。
「若いころ、演技をプロとしてやれるとは思っていなかった。でも、演技には何か魔法のような魅力があった。
感情や物語を探求できるあの世界に、引き込まれていったんです」(ガーディアン誌)。
名門演劇学校「ドラマ・センター・ロンドン」で修行
ロンドンの名門演劇学校「Drama Centre London」に入学した、コリン·ファース。
ここは、映像向けの即効性よりも、発声·身体表現·古典劇の読解を重視することで知られる、格の高い学校です(Wikipedia英語版)。
名門校に入学できたのは、コリンに才能があったからでしょうね。もちろん、本人の努力もあったでしょう。
卒業公演ではハムレットを演じるなど、実力を認められていたようです。
コリン・ファースの若い頃の挫折と復活は、演技の深みとして昇華(まとめ)
コリン・ファースの若いころが今も輝いて見える理由は、「演技の一貫性」だけではありません。
挫折を知っている人だけの静かな強さ、また、子供たちや元パートナーに、別れた後も見せる、誠実さ。
それは、ダーシーや、ジョージ6世が、一人の人間として、内面の葛藤と向き合う姿と重なります。
若い頃の挫折や葛藤は、演技の深み、静かで知的な存在感として昇華されているのです。
今では、60歳過ぎていますが、ヒュー・グラントと共に(日本では)「イケオジ」と呼ばれ、さらに存在感を放っています。
そして、知れば知るほど、彼の作品への信頼感が深まっていき、さらにコリン・ファースのファンになってしまいますね!

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